「ラディ。何かあった?紋章が・・・・・・―――― あれ?」
気配なく呑気な声がかかり、再びラディの眉間に皺が寄る。
せっかくほぐしたのに。
夜の間だけは一人にさせろと言っただろ、と振り返って文句を言おうとしたラディの行動は、思わぬところから入った奇声に中断させられた。
「な、なあ・・・っ!!? お、おま、お前、・・・・・・フォン!?」
ラディの横にいるテッドが奇声を上げて指差して叫んだのは、確かにその人物の名だった。
指差された方はというと、夜の焚火の灯りでも判別がつくほど鮮やかな蒼瞳を瞬いて、不思議そうに首を傾けた。動きに合わせて揺れる長めの髪の毛は、こちらは夜の闇に紛れているが薄茶色のはずだ。
ラディにとっては数日前に初めて会った妙な不審人物だが、テッドの驚きようを見るとこちらは顔見知りということだろうか。
内心で首を傾げるラディをよそに、ぱくぱくと何度か言葉が空回りしたテッドがようやくといった感じで声を出した。
「生きて、たのか・・・」
安堵したのか愕然としたのか判断しかねる響きなのが気になるところだ。
テッドのそんな反応は意に介さないのか、首を傾げたままフォンが不思議そうに呟いた。
「そっちこそ、死んだんじゃなかったの?」
ざっくり一刀両断。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
確かにテッドについて、そこは今一番の突っ込みどころなのだが。
だからといって顔を合わせて開口一番に・・・まぁ言いたくもなるか。
すでにすっかり背後の人物に文句を言う気が失せているラディに、テッドが何故か絶望的な表情で顔を向けてきた。指はまだ相手に向いたままだ。
今にも崖から突き落とされそうな哀れを誘う表情をしている親友を不思議に思って首を傾げる。
「知り合い?」
至極単純に気になったことを聞いただけだが、返ってきた反応は微妙だ。
「うん、まぁね」
「・・・・・・・・・」
気負いなく頷いたフォンとは反対に、テッドは無言で力なく項垂れた。
予期せぬ 再 会 ?
「地獄との再会・・・!」
「なにか言った?」
「イイエナニモ・・・」
2011.10.16
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